診療内容の型をつくりたい 電子カルテに実装したい 

診療の型を作りたいと前から思っている。理由は3つ

  1. エラーを減らすため
    Dr.G的な診断推論が必要になる場面ってあまりないな。って思ってる。
    五月雨式に鑑別診断を上げていくような時間的余裕はないし、そもそも、多くの症例はそんなに複雑ではない。
    失神の症例がきたらPocket Medicineに載ってるアルゴリズム通りにやっていったほうがいい気がするのになぜ、みんなそうしないんだろう?
    同じ道を毎回通れば迷うことが少なくなるように、同じアルゴリズムを何回も運用して、再現性を高めてPit fallを把握したほうがエラーが減って、診療にかかる時間も減るのに。って思う。
  2. 医療不信を払拭するため
    診療アルゴリズムが医者それぞれで我流なので、患者もスタッフも混乱するし、何が正しいのか学びにくくなっている。
    同じ症状で病院に行くたびに、対応が違えば不安を抱くのは普通じゃないだろうか?
    だから、患者がトンデモ医療にとびついてしまうのも、検査を過剰に求めるのも自然なことじゃなかろうか?
    診療アルゴリズムを可視化することで、医者を雰囲気とかだけじゃなくて、診療行為の質そのもので評価できるようになるんじゃないか?
  3. 構造化された情報を得るため
    医療が科学であるならば、データを正しく解釈して改善されていくはずだけど、今の自由記述のカルテじゃ、人によって診療内容がバラバラすぎるし、データもぐちゃぐちゃで解析できない。

その点で北野夕佳先生のこのブログは素晴らしいなと思った。

http://ykitano5min.hatenablog.com/

シンプルな型を作って、これを組み合わせて運用していく。こういう考えがもっと広まったらいいのになと思う。

 

この型を電子カルテに実装できたら、もっと良いと思う。

メリットは2つ

  1. 教育的効果が高い EBMの普及速度を加速する。
    いかにエビデンスが蓄積されていっても、一次文献を読み込んで正しく診療行為に還元できるような現場の医師は非常に限られれていると思う。そういう時間と知的体力と、モチベーションがある医師は。
    風邪に抗菌薬出すのやめようとか、経口第3世代セフェム出すのやめようとか、DM経口薬のファーストチョイスはメトホルミンにしましょうとか、低レベルなことすら改善されるのには多くの時間がかかる。
    電子カルテに基本的な診療アルゴリズムを実装してしまえば、正しい知識の伝播速度が加速度的に上がるのではないか?
  2. 構造化されたデータが集めやすい
    取るべき問診、初見、データが抜けなく集めやすくなるはずだ。

整形外科領域だと、感覚的な部分が多いからなかなか難しいけど、外傷の手術適応とかはロジカルにやるべきなんじゃないかと思う。
上級医の経験と勘で適応が決まっていっているような現状にすごくモヤモヤがある。自分が聞きかじった知識で適応を決めるよりも信頼できるのは間違いないかもしれないが、再現性はない。経験と勘は世代を超えて継承されにくい。

自分が患者だったら、なぜその手術を選択するのか、データに基づいて語れる医師に診てもらいたい。

EBO-hand116-Management of finger fractures(指の骨折)

 

Q1 指骨折のレントゲン上の分類にコンセンサスはあるか?

  • Recommendation
    レントゲン画像上の分類の信頼性には限界がある。
  • Findings
    骨折部の角度や、AO分類などで判定者内一致、判定者間一致の先行研究がある。

Q2 中手骨関節外骨折はいつから可動域訓練を開始するか?

  • Recommendation
    早期可動は最終的なアウトカム改善につながらない。
  • Findings
    小指中手骨骨折の固定と早期可動訓練では、3ヶ月以降の動作に違いがなかった。
  • 個人的感想
    MPは拘縮しやすい印象があったけど、以外に気にしなくてよいのか?

Q3 不安定性の高いPIP脱臼骨折でORIFかdynamic external deviceを用いるべきか?

  • Recommendation
    十分なエビデンスはないが、あるrandamized trialからより低侵襲な治療のほうが望ましいかもしれない。
  • Findings
    一つのRCTでK-wireとORIFを比較してORIFのほうがPIP可動域が大きかった。

Q4 中手骨および指骨の関節外骨折でピンニングとORIFのどちらが良いか?

  • Recommendation
    ある固定法が他より優れていることを示す十分なデータはない
  • Findings
    prospective randomized trialでは、指の斜骨折で経皮的ピンニングとラグスクリューで動作、筋力、疼痛、アライメントで有意な差がなかった。
    retrospective cohort studyでは、中手骨骨折で髄内ネイル固定とプレートスクリュー固定で可動域とDASH scoreで有意な差がなかった。
    nonrandomized controlled comparsionでは、小指中手骨頚部骨折で、K-wireの横方向への刺入と髄内刺入で可動域、握力、癒合率で有意な差がなかった。
  • 個人的感想
    ちゃんと固定できたら何でもいいし、固定法よりは術者の腕が重要なんだろうな。

Q5 マレット指の治療法は何が一番良いか?

  • Recommendation
    骨性でも腱性でも殆どの症例でスプリントによる保存療法が安全かつ信頼できる。
  • Findings
  • 個人的感想
    骨性でも保存療法で良いの?!

Q6 プレートスクリュー固定を行った指骨折で、機能や可動域の予後予測因子は何か?

  • Recommendation
    年齢、軟部組織の損傷程度、プレートの形状、関節内骨折かどうかが、最終可動域の予後予測因子である。
    癒合率は基節骨、横骨折、肉体労働者で悪い

EBO-trauma57-Subtrochanteric fractures(転子下骨折)

 

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本著

Q1 ネイル刺入部は転子窩と頂部のどちらが良いか?

  • Recommendation
    どちらであっても同じくらい内反変形は起こる。出血量、手術時間、骨癒合までの期間、股関節機能などで、どちらかが優位であるというはっきりとした結論はない。
  • 個人的感想
    頑張って転子窩に入れてたんだけど。。確かにネイルのデザインとかにもよってくるのはわかる。転子窩エントリーで血流障害が心配なんだけど、その言及はなかった。

Q2 解剖学的整復にしたほうが破綻率が減るか?

  • Recommendation
    解剖学的に整復したほうが破綻率は減る(解剖学的整復2%,整復不全26%)
  • Findings
    先行研究の整復の定義はまちまちだが、多くは内反変形5°以上、屈曲変形10°以上、大きなギャップがあることを非解剖学的としている。整復が許容範囲でなければ観血的に切り替えることを先行文献では推奨している。
  • 個人的感想
    そりゃそうだと言う気もするが、整復不全時の破綻率の高さは思った以上だった。

Q3 観血的整復を行うと癒合不全率が上昇するか?

  • Recommendation
    非観血的整復が不十分であれば観血的に切り替えることを推奨する。観血的に行うことは、変形癒合率を下げ、癒合不全率を上昇させず、感染を増加させない。
  • Findings
    全て観血的を行っても癒合不全率は2.3%(1/44)という報告。癒合不全および変形癒合率が観血的で16.7%(4/24), 非観血的で30.4%(17/56)という報告もある。
  • 個人的感想
    積極的に開けていこうと思った

Q4 髄外と髄内、どちらのデバイスのほうが破綻率が低いか?

  • Recommendation
    骨密度の低い高齢者であれば、IMのほうが髄外デバイスより破綻率は低い。
    高エネルギー外傷の若年者であれば、破綻率はあまりかわらない。
  • Findings
    retrospectiveは24本、randomizedが3本と先行研究はたくさん。randomizedは症例数多くなく、IMの相対的リスクの幅は大きいが、3本ともIM優位。

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    本著


  • 個人的感想
    IM一択ということでいいだろう。

     

    Evidence-based Orthopedics (Evidence-Based Medicine)

    Evidence-based Orthopedics (Evidence-Based Medicine)

     

     

EBO-trauma56-Intertrochanteric fractures(転子部骨折)

 

Q1 不安定性かどうかをはっきりと判断することはできるか?

Q2 24時間以内に手術したほうが良い?

  • Recommendation
    入院時から48時間以内に手術すべきである。
  • Findings
    16の先行研究、計26万人を対象としたsystematic reviewでは入院時から48時間を超えると30日以内の死亡率が41%上昇し、1年死亡率が1.32倍になるとされた。多くの先行研究で入院時から手術までの時間を対象としており、骨折から手術までの時間ではない。しかし、3574例を対象とした登録研究が、前者が後者の代理アウトカムとして使えるという結論を出した。
  • 個人的感想
    思っていたより死亡率は高く、手術内容より早く手術できる大勢の方が大事なのでは思うくらいだ。

Q3 SHSとIMのどっちが良い?

  • Recommendation
    不安定性に対しても現状のエビデンスでは同様に効果的と考えられるが、新生代のIMを勧める。
  • Findings
    最新のCochrane reviewを含む複数のmeta analysisでIMのほうが合併症が多いとしている。一方で、新世代のIMではインプラント周囲骨折が少ないと報告している。IMのほうが優れているというエビデンスはないが、IMの使用率が急増したのが事実である、。
  • 個人的感想
    原著を読むべきだが、IMで合併症がそんなに多くなる意味がわからない。Q5で不安定型にはIMとなっているので、IM一択で良いでしょ。

Q4 不安定型の時にはロングネイルを使ったほうが良い?

  • Recommendation
    不安定型にロングネイルを推奨するほどのエビデンスはない。
  • Findings
    バイオメカ研究では、粉砕などの不安定型に対してロングネイルを用いることで安定性が高まるとしている。転子下や近位骨幹部では良好な成績を出しているが、不安定型転子部骨折に関する比較研究はない。
  • 個人的感想
    エビデンスはなくても不安ならロングネイルを使うのが妥当な気がするし、RCTは組みにくそう。

Q5 どの程度の脚短縮は許容される?

  • Recommendation
    不安定型にはIMのほうが良さそうだが、エビデンスは乏しい。
  • Findings
    脚短縮は外側部の転位で二次的に起こることが多い。単に整容的な問題でなく、股関節周囲の筋力が落ちてしまう。IMを用いることで脚短縮が減るという先行研究がある。
  • 個人的感想
    不安定型にはIM

 

Evidence-based Orthopedics (Evidence-Based Medicine)

Evidence-based Orthopedics (Evidence-Based Medicine)

 

 

 

Rockwood 9e  Fractures Package

Rockwood 9e Fractures Package

 

 

入院患者の発熱マネージメント

「やっぱりあのお祖父ちゃん発熱しちゃったかあ。ちょっとむせてたしなあ。とりあえず採血とレントゲンね・・・。やっぱり炎症反応は高いけど、胸部レントゲンはいまいちはっきりしないなあ。そういえば尿路感染もあるかもだよな。尿検査しとこう・・・。尿検査では細菌陰性?膝さわってみると熱感あるし膝蓋跳動陽性だ。偽痛風かな??」

。。みたいな後手後手対応にならないように見るポイント、する検査決めてしまってます。

 

挙げる鑑別疾患は下記の通り9つ

http://jyoutoubyouinsougounaika.hatenablog.com/entry/2016/06/26/235318

感染症3つ  :肺炎、尿路感染、肝胆道系感染

医原性3つ  :デバイス 薬剤 偽膜性腸炎

寝たきり3つ :褥瘡 偽痛風 DVT

 

診察後に血液検査、尿検査、胸部レントゲン、各種培養をオーダーします。

カルテ記載も下記の様にルーチンです

 

"ROS" 呼吸困難感() 腹痛() 下痢() 関節痛() 下肢痛()

”Vital記載" RR GCS BP PR Sp BT

"Physical" 肺雑音()  腹部平坦軟圧痛() CVA叩打痛()  デバイス刺入部周囲腫脹発赤() 褥瘡() 四肢の関節熱感() 前脛骨部浮腫() Homans徴候()

"血液検査、尿検査"

"胸部レントゲン"

"各種培養"

 

身体所見が上記で過不足ないのかどうかは正直よくわかってないですが。。改善点あれば教えてください。

 

 

総合内科 ただいま診断中!   フレーム法で、もうコワくない

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周術期管理で参考にする文献

周術期管理の仕方は内科ローテで教わらないし、上級医に聞いてもふんわりとした答えが帰ってきて困ったりしませんか?

自分は下記3冊を参考にすることが多いです。

Hospitalistはちょっと難しいけどとても良く、レジデントノートは記載が簡潔すぎて逆にわかりにくく、病態生理など知りたかったらICU/CCUの追い方を読んでみることもある、という感じです。

 

 

 

Hospitalist(ホスピタリスト) Vol.4 No.2 2016(特集:周術期マネジメント)

Hospitalist(ホスピタリスト) Vol.4 No.2 2016(特集:周術期マネジメント)

 

 

 

 

 

ICU/CCUの薬の考え方、使い方 ver.2

ICU/CCUの薬の考え方、使い方 ver.2

 

 

外傷治療フロー

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効率化とエラー削減のためには、業務フローをシンプルに定型化することが重要です。

自分は多くの外傷患者を上記のフローで管理しています。赤数字がオーダー入力するタイミングです(②を除く)。全ての外傷に対して個別の診療パスを作ることは現実的ではありませんし、骨折型等によってフローも変わってきてしまいます。基本的にこれで十分だと思っています。